「祖母を誇りに思う」介護エッセイ応募は選外でしたわ
あ、そうだ、と思い出し、Webをたどってみると、9月に応募した介護作文コンテストに落選していた事に今頃気がついた。結果発表は10月10日だったのね。あらら、私を入選にしないなんて、なんてもったいないんざましょ。 せっかくなので、ワタクシ群青亜鉛(ぐんじょうあえん)が応募した文章を修正なしで、全文掲載させていただきます。
作品タイトル「祖母を誇りに思う」
-本文以下-
特別養護老人ホームに入所して12年になる祖母は103歳。要介護認定5。ミキサー食の飲み込みも鈍くなり、毎食完食とは言い難い。この一年は微熱が出たり、誤嚥性肺炎や尿路感染等 、高齢者が避けて通れない病状で入退院を繰り返し、お迎えも近いのかしらんと思うことが度重なる。
孫という立場でいっちょかみな手伝いを始めて既に22年。在宅では介護保険のサービスをフル活用し親戚同士でみること9年半。今ほどサービスは充実しておらず、探して利用を提案するのが私の役割だった。
施設に入所しても介護は終わる訳ではない。在宅時より別の大変さがあり、コミュニケーションを取ることの難しさを実感した。
祖母へ一通りの介助が今でも出来る事が私の自信に繋がっている。ベッドから天井走行リフトを使って車いすへの移乗介助、食事介助、口腔ケア、ポータブルトイレでの排泄介助、ベッドへの寝かしつけから、パッドの装着、着替え等。
職員さんの様に手際良くは出来ず、いつも慌ただしいくせに時間がかかる。完璧に出来ると格好もいいのだが、排泄介助等の失敗はいつものこと。素直に職員さんに助けて〜と叫びます。以前は全部一通り自分でしないと気が済まなかったのだが、身体がしんどい時や時間が無い時等は、ようやくバトンタッチが出来るようになった。とはいえ私はサブのお手伝い役。行ける時にだけ行く気ままな通い介護だ。
主介護者の母は定期的に行き祖母の様子をみる。有言実行ではなく不言実行。叱咤激励をしながらの食事介助は施設内でも有名らしく、なぜか母が介助をすると完食出来てしまう。職員さんからは絶大な信頼を得ているようなのだ。
私は今は環境整備役だと割り切っている。祖母が数えの100歳を過ぎてから、必要にかられポジショニングやシーティングというものを勉強するようになった。これが又簡単ではないことを痛感。施設は多人数による介助が基本。完璧に同一の介助はなかなか難しいのだなあ、そして当たり前なのだが、スタッフさんにも得意不得意があるのだなあと分かって来た。
近頃は祖母に会いに行くと、長生きして欲しいなあとぽろり涙が出たりする。ばあちゃんが大好きなのは変わらない。
だが感傷に浸れるのも、施設の職員さんがしんどいお世話をして下さっているお陰よね、と思える様になった。若い頃は斜に構え、だってお仕事じゃない、有難うございますばかり言うのも変よねえ、と思っていた私。いつのまにか、有難うございます、は素直に出ている。
祖母の介護を通してリハビリの専門職の方や介護職の方との交流も増え、その経験から介護に的を絞ったイラスト等の依頼を頂く様になった。祖母の介護を通して学ばせてもらった事を家族介護者の視点から、余すところなく、次の世代に伝達することに真摯に取り組んでいきたい。これが私の役目だと今は迷いがない。祖母の介護に携われている事を心から感謝し、私は祖母を誇りに思っている。
(2014年9月14日応募)
〜イラストは、100歳のときのばあちゃんです。〜
【群青亜鉛:ぐんじょうあえん:介護イラストレーター 】
◆介護イラスト&エッセイを得意とするイラストレーター。家族介護の視点で、介護の現状と次の一歩をユーモアをまじえて発信する。祖母への”いっちょかみ介護”実践する。
◆介護関連著書 2冊
介護のお助けマンガエッセイ
介護用具・日用品カスタマイズ本(共著)
◆ウェブ連載中
ウェブマガジン ”介護ライブラリ”にて「自宅で介護お助けヒント集」こちら